インフルエンザについて

大在こどもクリニック

 院長 澤口博人

副院長 澤口佳乃子

インフルエンザは毎年冬から春にかけて必ず流行し、子供を含めた国民の5〜10%が罹る病気です。私達の記憶に新しいのは、1998年から1999年にかけての冬期にインフルエンザの大流行がおこり、呼吸器合併症による多くの老人の死亡や、インフルエンザ脳炎・脳症による乳幼児の死亡がクローズアップされたことでしょう。インフルエンザは昔からある病気なのですが、決してあなどれません。正しい知識をもって対処していきましょう。

1:病因

インフルエンザは、インフルエンザウイルスによって引き起こされ、強い伝染力のある急性熱性疾患です。

インフルエンザウイルスは、ヒトにはA型とB型が流行します。A型はさらに、ウイルスの表面にあるHAとNAという2種類の突起の組み合わせで分類され、香港型はH3N2、ソ連型はH1N1、アジア型はH2N2と表します。

2:疫学状況

毎年世界中で流行が起き、我が国でも75万〜100万程度の患者が報告されます。流行は11月上旬頃から散発的に発生し、1月下旬〜2月上旬にピークを迎え、4月上旬頃までに終息します。

流行のもたらす影響は乳児および高齢者において強いといわれています。

インフルエンザA型ウイルスは、10〜40年の周期で新型ウイルスをヒトの世界に登場させており、登場した当初はほとんどのヒトが抗体を有していないため、世界中で大流行を引き起こしています。

3:予防接種

予防接種の有効性は?

インフルエンザワクチンの予防効果は、一般的にはA型に対しては70〜90%、B型には40〜50%といわれています。

現行のインフルエンザワクチンの目的は、血中の中和抗体を産生させることにあります。中和抗体はインフルエンザウイルスの表面に出ている突起(HA)の活性部分をおおってウイルスの活動を阻止してくれる最も大切な抗体です。ワクチン接種で血中の抗体を高めておくと、感染初期のウイルス血症を抑制できるだけでなく、上気道の粘液中には血液中の中和抗体も滲み出てくるので、上気道に入ってきたウイルスを中和しますから、抗体レベルが高ければ感染を防ぐこともできるのです。インフルエンザの症状は、ウイルス増殖の勢いが強いか弱いかにかかっているので、ワクチンで抗体価を高めておけば、感染しても増殖をそれなりに抑制してくれるので、その分軽症化が期待できます。

最近、小児のインフルエンザ脳症・脳炎が毎年数多く発生していることがわかってきましたが、いまのところワクチン接種を受けていない例がほとんどでした。脳炎・脳症がウイルス血症を介して進展するものとすれば、現在の予防接種によって中和抗体を獲得しておけば、その予防に有効であると考えられます。

予防接種は毎年必要ですか?

インフルエンザワクチンの効果はだいたい半年ぐらいで、1年もすると抗原変異したウイルスには対応できにくくなるので、毎年接種することが望ましいです。

副反応は?

副反応としては、注射された部位の腫脹が7〜8%の例にみられ、ごく少数に微熱があります。

なぜ卵アレルギーが問題になるのか?

インフルエンザワクチンの製造過程において、インフルエンザの増殖に孵化鶏卵を用いるために、わずかながら卵由来の成分が残存する可能性があり、卵アレルギーの副反応が起こり得ます。近年は高純度に精製されているのでほとんど問題となりませんが、強い卵アレルギーがある場合は、接種を避けるか十分注意して接種する必要があります。卵を含めアレルギーの有る方、心配な方は必ず接種前にかかりつけ医と相談して下さい。

予防接種の方法(回数、うける時期)は?

1〜4週間(おすすめは3〜4週間)の間隔をあけて2回接種することが原則です。2回に分割して、間隔をある程度あけた方が免疫効果がよいのです。ただし、13歳以上の場合は、過去のインフルエンザ流行時の免疫があると考えられ、1回の接種であっても免疫効果が期待できるという意見があります。

そして、インフルエンザの流行に備えるためですので、予防接種は遅くても12月には完了することが望ましいです。流行が始まってからの接種では間に合わない可能性があります。

4:症状

(1)初期:

咽頭痛、イガイガ感、乾燥感、空咳、鼻水などが出現します。それから半日ないし1日遅れて発熱し、頭痛、全身倦怠感、食欲不振、関節痛、筋肉痛などの全身症状が現れます。

(2)極期:

この時期は、気道でのウイルス増殖の最も盛んな時です。初期に出た症状が3〜5日間続きます。発熱は1週間程度続くこともあります。

(3)回復期:

くしゃみ、鼻水、咳嗽、無気力などが数日続き、快方に向います。

5:合併症

1)呼吸器系合併症:

気管支炎、肺炎、喘息発作、中耳炎、クループなどがあります。

2)神経系合併症:

熱性けいれん、脳症、脳炎、ライ症候群、ギラン・バレ症候群、ベル麻痺などが知られています。

熱性けいれんは、1才児に最も多いといわれています。

脳症、脳炎、ライ症候群のような中枢神経系を冒す場合は、インフルエンザの極期あるいは回復期に、嘔吐、意識障害、けいれん重積などの症状で始まります。急速に意識障害が進行し、死亡や後遺症の率が高いことが報告されています。乳幼児に多いです。

6:診断と検査

症状と診察所見から、インフルエンザの流行期を考慮して診断しています。

最近迅速診断法が数種類開発され、保険も適応されるようになり、外来で短時間で診断可能になりました。100%ではありませんが、発病初期であるほど陽性率は高く、かなり確実に診断できます。保険が効きますが、検査料は高めです。

7:治療

これまでは症状に応じた治療のみで経過を看ざるを得ませんでしたが、数年前から治療薬が登場してきました。

家庭で気をつけること

1. 安静臥床:初期、極期には特にゆっくり休むことが大切です。

2. 保温・加湿:暖めすぎは避け、熱が体にこもらないようにしましょう。インフルエンザウイルスは乾燥に強いので、室内は加湿をしてインフルエンザの感染力を弱めましょう。

3. 食事:食欲はなくてあたりまえです。無理して食べないように。

4. 水分の補給:水分を十分にとって、脱水状態にならないように気をつけます。

5. 次の診察:先生が指示した日、処方した薬がなくなるけれど症状が続く場合などには必ず受診してください。

 

薬物療法

1) 対症療法

症状に応じて、解熱鎮痛薬や、咳・痰・鼻水に対する薬を処方します。

2)治療薬

インフルエンザウイルスの体内での増殖を抑制する薬で、根本的な治療です。インフルエンザの症状が発現してから48時間以内に使用を開始すると、症状を1〜2日早く改善します。5日間の使用が勧められます。

現在、日本では3種類の薬が使用できます。

@アマンタジン(商品名シンメトレル)内服薬

A型インフルエンザに有効で、B型インフルエンザには効果ありません。重大な副作用はまれですが、5〜33%に不安、不眠、食欲低下、嘔気などが認められます。また、短期間に耐性化してききにくくなることがあります。

Aザナミビル(商品名リレンザ)吸入薬

A型 B型のいずれのインフルエンザにも有効です。特別な吸入器を用いて吸入します。7歳以上の治療に認可されています。副作用も吸入直後の咳ぐらいでほとんどなく、耐性化もほとんどありません。薬代は少々高めです。

Bオセルタミビル(商品名タミフル)内服薬

A型 B型のいずれのインフルエンザにも有効です。カプセルとドライシロップがあり、1歳以上の治療に認可されています。主な副作用は、軽度の嘔気、下痢などですが、重大な副作用は認められていません。耐性化は1〜9%程度です。薬代は少々高めです。

8:登校・登園について

インフルエンザは、学校保健法第二種の伝染病に分類されており、伝染力を考慮して、「解熱した後2日を経過するまでは出席停止」とされています。

9:予防法

1. 外出から帰宅後のうがい、手洗いを行う。

2. 健康に注意し、過労を避ける。疲れたら十分休む。栄養に気を配る。

3. インフルエンザ流行中は無用の外出を避け、なるべく人混みの中に行かない。

4. 室内を適度な湿度に保つ。

5. 予防接種を受ける。

10:最後に一言

近年インフルエンザに対しての治療は進歩してきましたが、罹ってしまったら、重症化するか軽症で終わるかは経過を見守るしかないというのが現状です。罹らないため、罹っても軽症で終らせるための一番の対策は、やはり予防接種を受けることでしょう。ぜひ予防接種を受けて、備えを万全にして冬の季節を迎えましょう。

(文責 大在こどもクリニック 院長 澤口博人、副院長 澤口佳乃子